突然ですが、みなさんが「ファスナー」と聞いて想像するのは、以下の写真のどれでしょうか?

点ファスナー(スナップボタン)500S
①スナップボタン 500S
面ファスナー(YKK商品)の写真
②YKK クイックロン® 1QNN-N
引用元:YKK㈱ ジャパンカンパニー
YKKのビスロンファスナー(スタンダード)5号
③YKK ビスロン® ファスナー(スタンダード)

実はファスナーには、点ファスナー(画像①)、面ファスナー(画像②)、線ファスナー(画像③)の3つのタイプがあります。線ファスナーは、別名「ジッパー」や「チャック」とも言われています。

今回は、線ファスナーのことを「ファスナー」と呼びます。
ファスナーには、様々な機能やデザインがあり、スタンダードからオリジナル商品まで幅広く展開されているため、どの商品を使用すればいいのか悩まれる方も多いのではないでしょうか?

そこでファスナーの種類や名称、仕組み、用途などファスナーの魅力に迫ります。

1.ファスナーとは?

ファスナー(英語:Slide Fastener)とは、衣類などに用いる留め具のうち何度でも自由に開閉ができるものを指します。
ファスナーと一言で言っても様々な種類があり、ファスナーのトップブランドであるYKKが作るファスナーの年間生産量は、300万km以上です。
ファスナーは、衣服やバッグに留まらず、宇宙服(与圧服)やロケット、車のシート部分など様々な用途に使用されています。

2.ファスナー名称と仕組みについて

ファスナーとスライダーの各部の名称について
ファスナーとスライダーの各部の名称

引用元:YKKファスナーカタログ ファスニング専科

ファスナーは、
◎「エレメント(務歯)」という嚙み合わせ部分
◎「スライダー」という手で持って動かす部分
◎「テープ」という布の部分 から作られています。
とはいえ、上記のように他にも細かいパーツが組み合わさって出来ているのです。

スライダーは、エレメントを嚙合わせる役目を担っています。スライダーの中はY字路のトンネルになっており、左右のエレメントがY字のトンネルを通り歯車のように組んだり離れたりします。これがファスナーの仕組みです。 ファスナーがスムーズに開閉するためにはスライダーやエレメントの形、寸法が重要です。

3.ファスナーの種類や特徴をまとめてご紹介

ファスナーの種類は、大きく分けてメタルファスナー・コイルファスナー・樹脂射出ファスナーの3種類あります。樹脂射出ファスナーと聞くと馴染みがない方も多いかもしれませんが、YKK製品名は、ビスロン® ファスナーです。 これらのファスナーの種類と特長をご紹介します。

それぞれ代表的なファスナーと特長については以前のブログをご確認下さい。
>>アパレル資材 YKKファスナーVol.1

①メタルファスナー(金属ファスナー)

YKKのメタルファスナー(スタンダード)3号止製品
メタルファスナー スタンダード 

メタルファスナーは、エレメントが金属でできているファスナーです。
古くからあり知名度も高いので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

エレメントにアルミ合金、銅合金を使用しているメタルファスナー(スタンダード)や、エレメント (務歯)の厚みを増すことで強度を向上させている、ワンウォッシュなどの洗い加工にも優位で丈夫なジーンズ用のYZiP® などがあります。

中でもEXCELLA® やEVERBRIGHT® は、金属光沢により、重厚感を持たせてくれます。 そのため、高級ブランドのバッグにも使用されています。

②コイルファスナー(樹脂ファスナー)

YKKのコイルファスナー(スタンダード)止製品
コイルファスナー スタンダード

コイルファスナーは、ポリエステルやナイロンの合成樹脂でできたエレメント(務歯)がコイルのように螺旋状になっているファスナーです。そのコイル状のエレメントを嚙合わせることで開閉が出来ます。
メタルファスナーやビスロン® ファスナーに比べ、柔軟性があります。長さ調節などの加工もしやすいのが特長です。
エレメント、縫い目が表地にでないものや、エレメントを直接テープに織り込むものなど様々な種類があります。凹凸が少なく、製品のデザインを邪魔することなく見事に調和できます。
裏使い(表と裏を逆にして使う)という仕様があるのもコイルファスナーのみです。裏使いにすることで、スッキリとした見た目となります。

衣服だけでなくバッグや雑貨類だけでなく、柔らかさを活かし、ワンピースやスカートなどの薄い生地やジャケットの小さな内ポケットにおすすめです。

③ビスロン® ファスナー(樹脂射出ファスナー)

YKKのコイルファスナー(スタンダード)5号止製品
ビスロン® ファスナー スタンダード

ビスロン® ファスナーは、エレメントをポリアセタールやナイロンなどの樹脂をテープ部分に射出成型したファスナーです。
射出成型とは、溶かした樹脂を流し込んで形を作る成形法のことです。

同じサイズのメタルファスナーにくらべて軽く、色の種類も豊富で、防寒服や作業服に使用されています。 エレメントの表面積が大きく、存在感を放っています。

今回ご紹介したファスナーもごく一部で、他にも機能に特化したものなど幅広く展開しています。
例えば、火や熱に強い「難燃ファスナー」、自由に変形させることができる「形状保持ファスナー」、海水に長時間つかっても錆びる心配のない「漁網用ファスナー」などがあります。

薄手で繊細な生地には、コンシール® ファスナーやフラットニット® ファスナーを使用したり、デニムにはメタルファスナーを使用したりと用途に合わせて選ぶことが大切です。また種類だけでなく、ファスナーの製品区分(止製品や開製品など)やスライダー(引手)の機能、サイズなどを正しく理解して選ぶことが重要です。

ファスナーの製品区分とスライダーの機能については、以下の記事をご覧ください。
>>YKKファスナーコードとは?基本から発注方法まで徹底解説

*YZiP、ビスロン、EXCELLA、EVERBRIGHT、コンシール、フラットニット は、
YKK株式会社の登録商標です。

4.YKKファスナーの歴史

1891年にアメリカのホイットコム・ジャドソンがくつひもを結ぶ不便さをなくすために考えたものが、ファスナーの起源とされています。

1921年に米国のメーカーが、閉める時の「シューッ」という擬音の「Zip」からファスナーを「ジッパー」と命名し、その呼び名も浸透しました。

日本でファスナーの生産が開始されたのは1927(昭和2)年とされています。

尾道で「巾着(きんちゃく)」からもじって、ファスナーを「チャック印」として販売したところ評判になり、「チャック」という名前が定着しました。
なお、中国語圏では「ラーリェン」。フランス語では「フェルメチュール・ア・グリシェール」と呼ばれます。また、メキシコなど中米諸国では「稲妻」を表す「シェレス・レランパゴス」と呼ばれています。 ファスナーが世界中で愛用され、その土地独特の名前がつけられていることが分かりますね。

日本、フランス、中国、アメリカ、中米諸国のファスナーの呼び名の違い
ファスナーの呼び名の違い
ジャドソン氏が開発した現在のファスナーの原型「The Original」
ジャドソン氏が開発した現在のファスナーの原型「The Original」

引用元:YKK-Vol.1 「ファスナー」と「チャック」と「ジッパー」の違い

そして、1934年に日本でサンエス商会(現在のYKK株式会社)が創業されました。

ファスナーの歴史については、『ファスナーのひみつ』をご覧ください。 また、歴史だけでなく、ファスナーのしくみやファスナー開発の流れ、そしてファスナーをつくる会社「YKK」について、まんがで楽しく紹介しています。

5.まとめ

ファスナーの種類についてのご紹介はいかがでしたでしょうか?

ファスナーはサイズや色展開も豊富で、衣服やバッグを制作する上で必須のアイテムとも言えます。ファスナーの種類且つエレメントによってそれぞれ特徴を持っており、エレメント1つで印象が大きく異なります。

今回ご紹介した他にも、多種多様な種類があります。 ファスナーについては、以前のブログでもご紹介しておりますので併せてご確認下さい。
>>アパレル資材 YKKファスナーVol.1

また、発注する際に悩まれる方も多いYKKのファスナーコードについて詳しく解説しているブログもございます。
>>YKKファスナーコードとは?基本から発注方法まで徹底解説

用途やイメージに合わせて商品をご提案することも可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。

<<参考文献、引用元>>
YKKファスニング専科
こんなところにYKK
YKKなるほどマメ知識
『ファスナーのひみつ』