アセテート繊維は、コットンやポリエステルなどと比べるとあまり馴染みのない素材だと思いますが、アセテートを使用した生地は、婦人アウターや高級裏地、さらに小物など幅広く使用されています。

意外と身近にあるアセテートとは、どのような生地なのか?また、特徴や用途についてもご紹介します。

1.アセテートとは?トリアセテート繊維の違いや成分について

上品な光沢感で発色性の良いアセテート生地
KKF2660

アセテートとは、木材パルプを主な原料としたセルロースに酢酸を結合させて作られる繊維のことです。光沢があり吸湿性が高いのが特徴です。

皆さんご存知の通り、繊維は大きく分けると「天然繊維」と「化学繊維」の2つです。化学繊維は、さらに「再生繊維」「半合成繊維」「合成繊維」「無機繊維」に分類され、アセテートは「半合成繊維」にあたります。

アセテート繊維の中には、「ジアセテート」と「トリアセテート」が含まれていますが、一般的に「アセテート」と言うと「ジアセテート」を指しています。酢酸の結合量(付加するアセチル基の数)によって呼び名が異なり、多く結びついたものをトリアセテートと呼びます。

厳密には、以下のようにそれぞれ定義されています。

◆アセテート ⇒ 水酸基の74%以上92%未満が酢酸化されている酢酸セルロース。
◆トリアセテート ⇒ 水酸基の92%以上の酢酸化されている酢酸セルロース。

繊維の分類表
繊維の分類
参照文献:繊維の種類と加工が一番わかる

半合成繊維とは

半合成繊維とは、セルロース(植物由来)やタンパク質(動物由来)の天然の原料を化学的に改良した繊維のことです。

代表的な繊維として、
<セルロース> ⇒ 木材パルプを主な原料とした「アセテート」、「トリアセテート」
<タンパク質> ⇒ 牛乳カゼインを主な原料とした「プロミックス」 があります。

2.「アセテート・トリアセテート生地」6つの特徴

アセテートとトリアセテートは、6つの特徴を併せ持っています。
しかし、前段でもご紹介した通り、化学物質の酢酸の結合量が違うため、効果の大きさには、僅かに差があります。今回は、その点も踏まえてご紹介します。

アセテート、トリアセテートの繊維のかたち
アセテート、トリアセテートの繊維のかたち
画像出典元:化学繊維のかたち|日本化学繊維協会

①  シルク(絹)のような美しい光沢感と柔らかさ

シルクのような美しい光沢感とドレープ性に加え、ふんわりとした弾力性を併せ持っています。
化学繊維であるアセテートですが、まるで天然繊維のようなふっくらとした肌触りです。
また、シルクよりも安価で扱いやすいため、シルクの代替えとして使われることもあります。

②  発色性の良さ

アセテート繊維の断面構造は、上図のようにレーヨンと同様に側面に筋状の溝が多くあり、シルク(絹)に似た光沢と深みのある鮮やかな発色性を持った繊維です。

 ③ 軽い

コットンやレーヨンなどと比べると、軽いのもポイントです。
軽量に特化した製品などにも使用されています。

④  環境に優しい

木材パルプを原料として作られる植物由来のアセテートは、高い生分解性を持ち、土に埋めると分解される性質があります。また、天然由来の素材のため、人体への影響も少ないと言われています。
そのため、環境に優しいエコな素材として、近年注目をされている繊維なのです。

⑤  適度な吸湿性

ポリエステルなどに比べると適度な吸湿性もあり、静電気が発生しにくいため、裏地にも使用されています。トリアセテートと比べると、アセテートの方が吸湿性は高いですが、反対にトリアセテートは、速乾性に優れています。

 ⑥  撥水性が高く、汚れにくい

アセテート生地は撥水性が高く、汚れにくいのも特徴です。
また、発色性も高いことからレイングッズ(雨具)などにも活躍しています。

これらの特徴に加え、アセテートはレーヨンや麻、ポリエステル、ナイロンなど混紡される素材を変えることで、季節問わず活用できます。

アセテート生地の洗濯などにおける取扱い注意点

上品な光沢感と発色性の良さ、熱可塑性など魅力的なアセテートとトリアセテート生地ではありますが、デメリットについてもご紹介します。

・シワがつきやすく、熱や摩擦に弱い
一見、デメリットのように見えますが「熱や摩擦に弱い=熱可塑性が高い素材」とも言えます。
熱可塑性とは、“熱によって溶け、冷えると固まる性質”のことで、アセテートの方がトリアセテートより熱に弱い(熱可塑性が高い)素材です。
この特性を活かし、あえてシワを作ったり、プリーツ加工を施した生地も多くあります。加工をする際は、色落ちや変色に注意が必要です。

KKF2660のジアセテート生地にプリーツ加工を施したもの
画像出典:KKF2660 アセテートメロンヴィンテージサテン|小紋工房
*上記の画像は、後ほどご紹介するアセテートメロンヴィンテージサテン生地
“KKF2660”にプリーツ加工を施しています。

・耐久性が低く、強度や摩擦に弱い

上品な光沢感と発色性の良さ、熱可塑性など魅力的なアセテートとトリアセテート生地ではありますが、耐久性が低く、強度や摩擦に弱い性質です。
そのため、アセテート製品の多くは、手洗いでの洗濯を推奨されことが多いです。正しくは洗濯表記をご確認ください。

・薬品に反応する

しみ抜きの際に使用されるアセトン(除光液などに含まれている)や、シンナーなどの薬品が付着すると、生地が溶けてしまいます。さらにアルカリ洗剤を使用すると光沢感が失われてしまいます。

3.アセテート生地の用途について

主にレディース向けの製品に使用されているアセテート生地ですが、使い道について詳しくご紹介します。

◎衣服
 ブラウス、シャツ、ジャケット、スカジャン、スカート、パンツ、
 ドレス、ワンピースやスーツの裏地、レインコート

◎小物
 ネクタイ、スカーフ

 ◎雑貨、その他
 メガネ拭き、カーテン

このようにアセテートは、表地のみならず裏地にも使用できる万能な生地なのです。他にも、傘やメガネフレーム、たばこのフィルターなどにも使用されています。

4.おすすめのアセテート、トリアセテート生地3選

▼アセテートメロンヴィンテージサテン KKF2660

上品な光沢感で発色性の良いアセテート生地
KKF2660

品番:KKF2660
生地幅:106/108cm
長さ:44m乱
混率:アセテート100%
特長:サスティナブル、吸湿性・速乾性、光沢感、発色性、しなやかさ、ハンドウォッシュ可

EASTMANアセテート〈Naia〉を使用したサスティナブルな素材です。
絹のように艶感のある光沢と発色性、しなやかさといった見た目の特長に加え、吸湿性・速乾性に優れているので、いつでも快適な着心地が得られます。ドライクリーニング推奨、ハンドウォッシュも可能です。
生地をロープ状につなげて、染液をジェット状に吹きつけ、水流(液流)に乗せて生地も循環させながら染色をする「液流染色」という染色法で行っているため、ナチュラルなシワを作ることができ、ヴィンテージ感のある生地に仕上がっています。

<使用用途>
ブラウス、ワンピースだけでなく、ライトな羽織物にまでお使いいただけます。

▼ACETATE DYED WRINKLE STAIN アセテートリンクルサテン OA6600

上品な光沢感で発色性も良く、軽いアセテート生地
OA6600

品番:OA6600
生地幅:106/108cm
長さ:44m乱
混率:アセテート 100%

絹のような光沢と繊細で上品な発色が特徴です。
爽やかで自然は風合いを持ち、快適な着心地を演出できます。しなやかで肌にやさしく、さらに優れた吸湿性、速乾性の機能を兼ね備えております。

<用途>
スカート、ワンピースにおすすめです。

▼ファージュボイルワッシャー 42574

上品な光沢感で環境に優しいアセテート生地
42574

品番:42574
生地幅:140cm
長さ:50m乱
混率:トリアセテート60% ポリエステル40%
特長:清涼感 透け感 しゃり感
生地の種類 :ボイル/シフォン
厚さ :薄手
染色方法 :後染(PIECE DYED)

合繊素材ながら麻を思わせる風合いが特徴の、清涼感あふれる素材。薄手で少し透け感があり、シャリ感とさらっとした肌ざわりが、より素材感を際立たせています。

<用途>
主にレディースのブラウス素材

5.まとめ

アセテートやトリアセテート繊維のご紹介はいかがでしたでしょうか?

サステナブル素材でもあるアセテート、トリアセテートの生地は、主にレディースファッションに使われていますが、ネクタイやスカーフなどの小物にもおすすめです。

まるでシルクのような美しい光沢感と色鮮やかな見た目だけでなく、適度な吸湿性や撥水性、さらに軽さも兼ね備えています。また、シワ加工やプリーツ加工にも打って付けです。

用途やイメージに合わせて商品をご提案することも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

<<参考文献>>
・ボーケン(2017)「半合成繊維 (アセテート・トリアセテート、プロミックス)について」
・繊維の種類と加工が一番わかる