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キュプラとは?素材の特徴から用途までを徹底解説

キュプラ生地

キュプラは肌触りの良さに加えて吸放湿性などの機能も兼ね備えた素材です。コートやスーツの裏地によく使用されますが、実はさまざまな用途で活躍します。この記事では、メリットが豊富なキュプラの魅力を詳しくお伝えします。

目次

キュプラとは?

キュプラは綿やポリエステルなどと同様に素材の一種です。とはいえ、キュプラという言葉は馴染みがなく、原料や製造法を知らない方も多いはず。 簡単に言うと、キュプラは綿花の一部を溶かして糸状に成形した再生繊維です。その製法を銅アンモニア製法と言うことから「銅」を意味するキュプラと呼ばれます。なお、正式には銅アンモニアレーヨンという名称です。 自然由来の素材なので土や海の中で自然分解することが特徴のひとつです。そのため、環境負担が少なくサステナブルな素材としても注目されています。

キュプラの原料

綿花
綿花の種(コットンシード)の周りにある産毛のような繊維がキュプラの原料です。この部分はコットンリンターと呼ばれ、本来は綿糸に使用されません。というのも、繊維が短すぎるため紡績して糸にすることができないからです。そのままでは糸にできないため、原料に化学的な処理を施して繊維にしています。

キュプラの製造方法

原料のコットンリンターを銅アンモニア溶液に溶かし、凝固浴(セルロースが解けない液体)の中に押し出して固めることで繊維にします。セルロースとは、綿や麻など植物性の繊維に多く含まれる物質です。つまり、綿に含まれるセルロースを細長い繊維状にした再生繊維がキュプラです。

また、凝固浴の中に押し出す際に流下緊張法という特殊な方法を使用します。それによって、繊維の断面が円形となり、表面が滑らかな繊維ができるのです。

再生繊維とは?

糸

レーヨンやキュプラの原料である木材パルプやコットンリンターを溶かし、セルロースを繊維状に再生させたものです。化学繊維に分類されますが、原料が天然素材で土に還るため環境に優しい素材と言えます。

具体的には、レーヨンやキュプラなどが当てはまります。柔らかい肌触りで光沢があり、高い吸湿性や染色性が特徴です。

 

一方で、ペットボトルなどを原料とした化学由来の再生繊維への関心も高まっています。「リサイクルポリエステル」や「再生ポリエステル繊維」とも呼ばれ、身近な衣類にも使用されています。原料のペットボトルは石油をもとに作られるため、土に還ることはありませんが環境負担の軽減に貢献する素材です。

キュプラ・レーヨン・シルクの違い

上品な光沢があり、見た目が似ているキュプラ、レーヨン、シルクの生地。実は見た目だけでなく、吸放湿性や染色性に優れているといった機能面にも共通点があります。

となれば、それぞれの違いは一体なんでしょうか?

キュプラ・レーヨン・シルクの違い

まず異なるのは原料です。シルクは蚕の繭をほどいて利用した天然繊維で人の肌と同じタンパク質が主成分です。肌馴染みが良く敏感肌の方にも選ばれています。一方で、キュプラとレーヨンは植物を原料とし、セルロースで作った再生繊維です。中でもレーヨンはシルクを真似て作られた歴史上初の化学繊維なので特徴が似ているのも納得ですね。

 

さらに、価格も異なる点のひとつ。シルクは高級品というイメージがあると思いますが、養蚕は手間がかかり大量生産が難しいというのが理由です。反対にレーヨンは比較的安価で、キュプラはこの中では中間といったところ。高級品のシルクと似た性質を持つレーヨンとキュプラはコスパが良いと言えるのではないでしょうか。

キュプラの特徴

レーヨン、シルクとの違いでも触れていますが、キュプラの特徴を詳しくご説明します。

高級感のある見た目で機能面でも優れたキュプラ。多くのメリットがありますが、デリケートな素材なので取扱いに注意が必要です。それでは、メリットとデメリットに分けて特徴を見ていきましょう。

キュプラのメリット

光沢感

光沢と高級感

キュプラの繊維は表面が滑らかなので、ツルっとした触り心地で上品な光沢があります。手間をかけて作られている分、高級感がある素材です。

吸放湿性

吸湿性、放湿性が高い

湿気を吸って吐き出す機能によって汗による蒸れが軽減されます。また、素材の水分率が高く制電性に優れているため、静電気がおきにくいことも特徴。肌にまとわりつきにくく、花粉やほこりの付着も抑えてくれます。

滑らかで肌触りが良い

キュプラは断面が円形で表面が均質な繊維です。そのため、肌触りが良く摩擦による刺激が少ないので敏感肌の方にもおすすめです。加えて、滑りが良いのでジャケットの裏地に使用すると着脱がスムーズになります。

染色性に優れる

染色性が高いキュプラは美しい発色も魅力。スカーフやブラウスなど綺麗なカラーが映えるアイテムはもちろん、ちらっと見える裏地も素敵な色見だとおしゃれさがグッとアップしそうです。

ドレープ

ドレープ感がある

しなやかで柔らかいキュプラはドレープ性が高く、優雅な印象を与えてくれます。シルエットが綺麗なので、スカートやワンピースにも最適です。

キュプラのデメリット

水に弱い

水濡れに弱い

水に濡れると水染みができることがあるので、雨などで濡れた場合は早めに拭き取りましょう。また、洗濯によって縮む可能性があるので取扱いには注意が必要です。

デリケート

デリケートな素材

水洗いによって縮んだり、シワになったりしやすい素材のため基本的に水洗いは推奨されません。ドライクリーニングが望ましいですが、洗濯表示によっては手洗いすることも可能です。

摩擦に弱い

摩擦に弱い

フィブリル化しやすい素材のため、摩擦を受けた繊維が裂けて毛羽立つことで白っぽく見えることがあります。鞄などとの摩擦や、汚れを落とそうと強く擦ることがないように注意しましょう。

希少性が高い

希少性が高い

製造元が限られており、供給が不安定な状況が続いています。在庫切れの品番やカラーもあるため、スムーズに手配が進まない可能性を考慮する必要がありそうです。

キュプラと他素材の混紡生地(ポリエステル・綿)

滑らかで光沢感のあるキュプラですが、混紡の生地はまた違った風合いを楽しむことができます。混紡する素材によって特徴が異なり、キュプラのデメリットをカバーすることも可能です。

キュプラとポリエステルの混紡

キュプラ×ポリエステル
<52062>キュプラ/ポリエステルフィブリルツイル

ポリエステルは丈夫な素材なので、キュプラとの混紡生地は適度なハリがあり、シワが気になりにくくなります。生地の種類により一概には言えませんが、比較的水に強く水洗いできる生地もあります。

キュプラと綿(コットン)の混紡

キュプラ×コットン
<42265>キュプラ/綿ブロードワッシャー

滑らかさを残しつつ、さらりとした肌触りになります。天然繊維の綿を加えることで、ナチュラル感やカジュアル感をプラス。シャツやワンピースなどにおすすめです。

キュプラの用途

上品な光沢と高級感のある見た目に加えて、吸放湿性や制電性といった機能面でも優れたキュプラ。それぞれのメリットを活かして様々な用途に使用されます。それでは、用途例とあわせておすすめの生地をご紹介します。

裏地

ジャケットの裏地

まず、キュプラと言えば裏地が代表的な用途です。スーツやコート、スカート、ワンピースなど裏地がついているアイテムはたくさんあります。その中でも、キュプラの裏地は素材にこだわった高級スーツに多く使用されています。制電性や吸放湿性、滑りが良いといった特徴は裏地にぴったり!染色性の良さを活かした鮮やかなカラーは表地との組み合わせの幅を広げてくれます。

裏地の役割

衣類には裏地があるものとないものがありますが、どうして裏地が付いているのでしょうか?裏地の役割を簡単にご紹介します。

・滑りを良くする

衣類同士の引っ掛かりを抑えて着脱をスムーズにしてくれます。

 

・透け防止

下着など内側の衣類を透けにくくする役割があります。また、表地を補強することで形を保ち、シルエットを綺麗に見せることが可能です。

 

・表地の保護

汗や皮脂などの汚れが表地に付着することを防ぎます。

 

・ファッション性

裏地の役割は機能面だけではありません。ジャケットやアウターの裏地にあえて表地と違った色を選んだり、柄を取り入れたりすることでおしゃれの幅が広がります。

裏地の定番!キュプラとポリエステルの違い

裏地によく使われる素材は主にポリエステルとキュプラです。中でも、ポリエステルは裏地に限らず、さまざまな繊維の中で最もよく使われています。では、キュプラとポリエステルにはどのような違いがあるのでしょうか?

キュプラとポリエステルの違い

キュプラは裏地にぴったりの特徴を持った素材で、ポリエステルとは違った良さがあります。それ以外の素材や混紡の生地も含めた中から用途に合わせて選ぶことが大切です。

裏地におすすめの生地

AKL5200
<AKL5200>先染めドビーストライプ
AK2970
<AK2970>キュプラタフタ

シャツ・スカート・ワンピースなどのレディースアパレル

シャツ・ブラウス

キュプラの柔らかくしなやかな風合いはレディースアパレルにぴったり!程よい光沢感は上品な印象を与えてくれます。さらに、ドレープ性が高いのでシルエットが綺麗になることも魅力のひとつ。シャツやブラウスにはウォッシャブルの生地を使用するとお手入れもしやすくなります。

おすすめ生地

52062
<52062>キュプラ/ポリエステルフィブリルツイル
41256
<41256>キュプラフィブリルツイル

ネクタイ・スカーフなどの小物​

ネクタイ

染色性に優れるキュプラはカラーバリエーションが比較的豊富です。そのため、着こなしのワンポイントになるネクタイやポケットチーフ、スカーフなどに最適。深みのあるカラーと適度な光沢によって高級感を演出します。

おすすめ生地

AK816W
<AK816W>キュプラジャガード
AK105
<AK105>先染めジャガード

裾除け(和装下着)

和装下着

キュプラは着物用の肌着である裾除け(すそよけ)にも人気があります。それは、肌にまとわりつきにくく、裾さばきが良いことが理由です。ツルっとしているので滑りが良く、裾除けと着物の摩擦が少なくなります。何と言っても歩きやすく、肌触りも良いことが魅力です。吸放湿性にも優れており、快適な着心地をかなえるキュプラは肌着にもぴったりと言えます。

おすすめ生地

AK1820
<AK1820>キュプラツイル
42265
<42265>キュプラ/綿ブロードワッシャー

キュプラは洗濯できる?お手入れ方法を解説

洗濯

キュプラは水に弱く、水洗いすると縮んだりシワになったりすることがあります。水洗いできない生地も多いため、ドライクリーニングに出すのがおすすめです。とはいえ、毎回クリーニングに出すのも費用や手間がかかってしまいます。生地によってはウォッシャブルのものがあるので、用途に合わせた生地を選ぶことが大切です。

まずは洗濯表示を確認

キュプラ製品の衣類をお手入れする場合、まずは洗濯表示を確認しましょう。水洗い不可の場合はドライクリーニングに出します。一方で、手洗い可能な場合は自宅で洗うことができるので、ポイントを押さえて優しく丁寧に洗いましょう。

洗濯機が使用できる

洗濯可

30℃以内の液温で洗濯機の使用OK

手洗いができる

手洗い可の洗濯表示

40℃以内の液温で手洗いOK

洗濯できない

洗濯禁止

家庭での洗濯禁止

自宅でのお手入れ方法

手洗いをする前に押さえておくべきポイントは3つです。

ポイント01

擦らずに優しく押し洗い

デリケートな素材なので強く擦るのは避けましょう。繊維が切れて毛羽立つのを防ぐため、洗濯ネットに入れて優しく押し洗いが基本です。

ポイント02

水につける時間を短くする

長時間水につけると縮んだりシワになったりする可能性があります。そのため、なるべく短時間で洗うことを意識しましょう。

ポイント03

水で洗う

汚れが落ちやすいからとお湯で洗うのはNGです。生地が傷んだり、縮んだりする可能性があるので注意しましょう。

これらのポイントを踏まえて、以下の手順で手洗いします。

手洗い
泡

手洗いの手順

まず洗面器に水を張り、中性洗剤を薄めます。そこに洗濯ネットに入れた衣類をつけて優しく押し洗いしましょう。次に、水ですすぎを行い洗濯機で10秒ほど脱水します。柔軟剤を溶かした水につけた後に再度脱水し、最後に干して乾かすと完成です。

洗濯機の使用はせず、優しく手洗いすることでダメージを防ぎましょう。素晴らしい特徴がたくさんあるキュプラ製品。長く愛用するためにも、丁寧なお手入れが大切です。

キュプラの生地をお探しなら

光沢による高級感や美しい発色に加え、肌触り抜群の上質な素材「キュプラ」。機能面も充実しており、裏地やレディースアパレル、小物でも活躍します。さらに、綿やポリエステルとの混紡であれば洗濯可能な生地もあり、取り入れやすさもUP。快適な着心地を提供してくれるキュプラ素材の生地を、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?

 

まずは、どんな生地があるのかTrim-park SHIMADAのサイトをチェックしましょう!

Trim-park SHIMADA(トリムパークシマダ)とは?

Trim-park SHIMADAは服飾資材のBtoB通販サイトです。アパレル、バッグ、雑貨用の副資材を幅広く取り扱っています。生地はもちろん、ボタン、ファスナー、テープ、リボン、パーツ類など服一着作る資材がまとめてそろうのがメリットです。

個人事業主やハンドメイド作家の方もご購入いただけますので、ぜひサイトをご覧ください!

<参考文献>

日本繊維技術士センター「繊維の種類と加工が一番わかる」

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