1.帆布(はんぷ)生地とは?
「帆布生地」とは、「(たて糸とよこ糸を交互に交差させて織る「平織り」の生地の一種です。複数の糸を揃えてねじりあわせて強度を上げた「撚糸(ねんし)」と呼ばれる糸を使っているため、丈夫で使い勝手が良く、色や厚みもさまざま。麻素材を除いては毛羽立ちも少なく、防水加工を施してある商品も多く、機能面でも優秀で人気のある生地です。
ねじりあわせる糸の本数や密度によって厚みが変わり、用途に合わせて「号数」や「オンス」の単位で厚みを選びます。
帆布生地によく似た、キャンバス生地・ダック生地とは?
帆布生地は、別名「キャンバス生地」「ダック生地」とも呼ばれていますが、それぞれ厚みに僅かな違いがあります。
キャンバス生地はやや薄目のものを指し、ダック生地や帆布生地は厚目のものを指す場合もあります。
【キャンバスの語源】
キャンバス(canvas)の語源は、ギリシャ語で麻を意味するκαμβάς(英語cannabis)からきております。実際に言葉通り、絵画を描くための「キャンバス」の生地としても使用されていたり、キャンバス生地を使用したトートバックを「キャンバストートバッグ」と呼ばれていたりと、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
【ダックの語源】
ダック(duck)の語源は、オランダ語で粗い麻布を意味するズック(Doek)からきています。今は馴染みがありませんが、運動靴や布靴のことを「ズック」と呼んでいました。
>>帆布・キャンバス・ダック 生地一覧は<こちら>
昔から愛用されてきた帆布生地
帆布生地の始まりは古代エジプト。耐久性や耐候性の高さを活かし、当時の物資の輸送手段である船の推進力として必要不可欠な「帆」として使われていました。「帆布(はんぷ)」という呼び方もここから由来しますが、当時は麻の一種であるリネン(亜麻)で織られていたようです。
日本においては、織田信長が船の帆として使用したのが始まりです。
主な産地
世界的にみると中国が群を抜いています。中国は、帆布生地の素材の一種である綿の生産量が世界一であることに加え、大規模な工場も多数あるのが理由です。しかし近年では、ベトナムなどの東南アジアやインド、パキスタンなどの南アジアの生産量も増加傾向にあります。
日本においては、岡山県倉敷市が国内トップの生産量です。その他にも滋賀県高島市なども有名な産地であるように、国産帆布生地も数多くあります。
>>日本製・国産帆布のおすすめブランドは<こちら>
2.厚みの単位「号数」「オンス(oz)」と厚み別用途の紹介
帆布生地は、糸の本数により厚みや重さ、またハリ感や強度も異なってきます。そのため、厚みや重さ
の単位を号数またはオンスという単位で表記します。基本10番手の糸を厚さに応じて、ねじりあわせて
織っています。
■号数とは
号数は帆布生地の「厚み」を表し、1号から11号まで号数が小さいほど厚い生地、大きいほど薄い生地になります。
号数には下記の表のようなJIS規格(JIS L3102)の基準がありましたが、実は1997年に廃止されています。しかし、生産現場ではこの号数の基準を使用しているため、売り場でも「〇号帆布」として販売されています。
■オンス(oz)とは
オンスによる分類は面積当たりの生地の「重さ」です。そのため、号数とは反対にオンス数が大きいほど厚い生地、小さいほど薄い生地になります。10ozや18ozのように表記され、10ozで11号、18ozで7号とほぼ同じ程度の厚さになります。
家庭用ミシンで縫える厚さは概ね8号まで。ちなみにバッグ作りには4号から11号までを主に使われ、その中でも多いのは6号から11号の生地です。しっかり自立させたり、重いものを入れたりする場合は厚みのあるものを。普段使いのリュックやエコバッグには、柔らかく薄いものが向いています。
バッグひとつでもニーズに合わせて厚さを選ぶことで、さまざまなバリエーションが楽しめる生地です。
■号数・オンスごとの主な用途
【6号・20oz】
使用例)トートバッグ、ビジネスバッグ、シューズ、体育館用マットなど
厚みがあり強度が高いため、引っ張ったり圧力がかかったりする用途に向いています。
【8号・16oz】
使用例)シューズ、リュック、ボストンバッグ、ジャケットなど
6号・20ozほどではありませんが、丈夫である程度の強度と使いやすさも必要な用途に適しています。
【9号・11oz】
使用例)ジャケット、帽子、体操マットなど
ほどほどに薄く、使ううちに柔らかさも増すので、衣料品にもよく使われています。
【11号・10oz】
使用例)エコバック、トートバック、パンツ、帽子、ポーチ、エプロン、カーテンなど
薄くてしなやか。強度はあまり高くありませんが、扱いやすいのでさまざまな日用品に使われています。
*細い糸番手を使用した79A(ななきゅうえい)もあります。これは、11号帆布によく似ていますが少し薄手の生地です。
このように、キャンバス生地は幅広く使われて、私たちの生活に馴染み深い生地なのです。
3.代表的な素材
主に綿(コットン)と麻素材の商品が豊富で、織られる糸によって「綿帆布」「麻帆布」と呼ばれています。また、ポリエステル素材で織られた「エステル帆布」もあります。
<綿帆布>
手触りが良く、濡れると目が詰まることで無加工の生地でも、ある程度水の浸透を防ぐことができま
す。従って、撥水性と通気性を併せ持っている生地です。バッグやエプロンなどにおすすめです。キバタ
(染色や仕上げ加工をしていない)生地は、天然繊維であるため、食品を扱う場所や小さな子供がいる場所
でも安心してお使い頂けます。
<麻帆布>
麻には様々な種類があります。その中でも、帆布生地は主にジュート(黄麻)素材とリネン(亜麻)素材、ラ
ミー(苧麻)素材を使用した商品が多く、綿帆布よりも吸水性と速乾性にすぐれており、地球環境にも優し
い素材です。通気性を重視するジャケットなどの衣料品から、カーテンなどのインテリア雑貨まで幅広
く使用されています。麻で作られたバッグは、「ジュートバッグ」と呼ばれており、近年注目を浴びて
います。
<エステル帆布>
エステル帆布は、ポリエステル素材で織られた帆布生地のことです。近年では、塩ビ樹脂加工を施した商品が多く、より強度で、耐摩耗性や耐候性に優れています。非常に耐久性と防カビ性が高いため、馴染みのあるトラックシートなどに使用されています。
このように綿や麻の天然繊維から、ナイロンやポリエステルの化学繊維まで様々な生地があります。また、サステナブルな素材として注目されている再生ポリエステル素材などの帆布生地もあります。
【再生ポリエステルとは】
再生ポリエステルとは使用済みのペットボトルを原料とした、地球環境に優しい再生ポリエステル素材です。吸湿性が低く、速乾性が高いなどの特長があります。地球環境に配慮したサステナブル素材は、近年注目されています。
4.加工の種類について
帆布生地は無加工もありますが、より幅広い用途で使用できるように商品も多くあります。前段でも出
てきましたが種類は様々です。今回は代表的なものをご紹介します。
シルケット加工
シルケット加工は、張力をかけながら苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)溶液中に通す方法で、大抵は染色工
程前に行われます。別名、マーセライズ加工とも言います。
綿に加工されることが多く、シルク(絹)の様な光沢感と風合いになるのが特長で、強度と形状安定性も高
くなります。また、この加工により繊維が膨潤し染料の吸収力が向上するので、発色の良い生地となる
のもポイントです。
パラフィン加工
パラフィン加工は、生地の中にロウを染み込ませて防水機能を持たせる方法です。古くから使われてい
る技法で、蝋引き加工とも言われています。
芯のあるハリ感と、ロウを染み込ませているため、生地の表面に少し白い線(チョークマーク)が出るのが
特長です。薄くて自立しにくいバッグでもパラフィン加工を施すことで、自立しやすくなります。
またチョークマークは使い込むと馴染み、味わい深い色味へと変化します。
糊付け加工
糊付け加工は、見た目と手触りを良くするために生地に糊剤を付与します。この加工により、ハリやコ
シ、生地の安定性を高めることができます。
樹脂加工
樹脂加工は、織物全体に化学系樹脂を浸して固定し、繊維間の動きを止める方法です。この加工によ
り、風合い調整やほつれ防止効果が高まります。一般的には、より完全な防シワ性を持たせるために行
われる方法です。
撥水加工
撥水加工は、水滴を弾き飛ばすために生地の表面に加工する方法です。ちなみに弱撥水加工は、一時的
な撥水効果があり、生活防水程度の撥水機能を持たせます。どちらも使用頻度や洗濯により、効果は弱
まります。
ラミネート加工
ラミネート加工は生地の表面にポリ塩化ビニール(PVC)を張り、防水性を持たせる方法です。したがっ
て、水分や汚れが付着してもすぐにふき取ることができます。また切りっぱなしでもほつれず、ハリとコシがあるのが特長です。別名、ビニールコーティングとも言います。
アクリルコーティング加工
アクリルコーティング加工は、アクリル系の樹脂を生地の片面にコーティングする方法で、ラミネート
加工同様の効果が得られます。ラミネート加工に比べると防水性は劣りますが、薄く仕上げることがで
きるので軽さを求める場合におすすめです。
5.帆布生地の6つの特長
古くから使用されてきた帆布生地は、耐久性・耐候性に加えてどのような魅力があるのかをご紹介しま
す。
①丈夫で耐久性がある
最大の特長。平織りで織られた生地は丈夫で摩擦に強いのですが、帆布生地は糸をねじりあわせてから
織っているため、一段と丈夫でほつれにも強く、耐久性があります。気に入ったアイテムを長年愛用で
きるのもいいですよね。
②水が浸透するのを防ぐ
高密度に織られている帆布生地は、織り目が詰まっているので水が浸透しにくいのも特長のひとつです。
帆船などに使用されている理由も納得ですね。帆布生地を使った製品は、突然の雨でも耐水性があるの
で安心です。また、帆布生地に防水加工を施した商品もあります。
③通気性がある
天然繊維の綿や麻素材の帆布生地は、通気性かつ吸湿性にも優れています。糸をねじり合わせた際に、
空気を通す小さな隙間があるためです。化学繊維のナイロンやポリエステル素材の帆布生地は、生地の
耐久性をより重視する商品におすすめです。
④経年変化を楽しむ
使い込むほどに柔らかさが増し、色合いや風合いの変化を楽しむことができます。使い方によって人そ
れぞれエイジング(経年変化)の仕方は異なるので、オリジナリティーが高く、使用するにつれて段々と愛
着が湧いてくるのも帆布が古くから使用されてきた理由のひとつなのではないでしょうか。
⑤厚み、色、素材の種類が豊富
厚みと色や素材の種類も豊富で、用途に合わせた生地選びがしやすいことも特徴のひとつです。同じパターンでも、厚みと素材を変えるだけでも印象が大きく変わることもあります。イメージに合わせて選べるのはもちろんですが、同じ帆布生地でも厚みと素材を変えて予想外の仕上がりを楽しめるのも帆布ならでは。
⑥機能性加工が選べる
前述ご紹介の通りさまざまな加工方法がありますが、同じ目的の加工でも組み合わせる素材と厚みによって風合いや機能性が変わります。用途に合わせて選ぶことで、より特徴的な製品作りが可能になります。
このように、帆布生地は強度が高いだけでなく、水の浸透を防ぎ、通気性も兼ね備えた良質な生地で
す。その他にも、用途に合わせて厚みやカラーを選べます。中にはリバティ帆布などのプリント柄があ
ったり、パラフィン加工などの加工を施してあったりと多種多様です。
6.帆布生地を長く使うために
強く丈夫な帆布生地ですが、風合いを保ち長く使うための注意点もあります。
水濡れを避ける
水に強い帆布ですが、水濡れは色落ちやシミ、型崩れの原因になることがあります。使う前に水ぬれと汚れ予防に防水スプレーの使用がおすすめです。
直射日光を避ける
強い日焼けや長時間の日焼けは、色褪せや黄ばみの原因になります。
生地を保管する際は日に当たらない場所を選び、製品使用する時は同じ部分が過度に日にあてないように気をつけましょう。
保管時の湿度と型崩れに注意する
湿度が高い場所での保管は、カビが生えたり変色の原因になります。保管する際は湿度を避け、形を整えておきましょう。
お手入れは正しい方法で
丈夫な帆布ですが、素材や加工によっても取り扱いが異なる場合があります。お洗濯やお手入れ方法などは、それぞれの生地や製品の指定の方法で行ってください。
7.帆布生地をお探しなら
帆布生地についての説明は、いかがでしたでしょうか?丈夫で耐久性がある上に、通気性や水の浸透を防ぐと言った機能面においても優れている生地です。さらに使い込むほどに深い味わいを出してくれます。様々な加工もあるため、バッグの他にもワークウェアやエプロン、アウトドア用品など幅広い用途として使われている人気の生地です。
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